- かかる
- I
かかる【掛(か)る・懸(か)る】❶物がほかの物に取り付けられたり, 支えられたりしてそこにある。 《懸・掛》(1)上方に掲げられる。 ぶらさがっている。
「壁に絵が~・っている」「凧(タコ)が木の枝に~・る」「大きな看板が~・った店」「戸口に表札が~・っている」「のれんが~・っている」
(2)中空にある。「月が中天に~・る」「天の川が夜空に~・る」
(3)〔自在鉤にかけて火の上に置いたことから〕鍋などが火の上にのせられている。「ガスコンロに鍋が~・っている」
(4)〔竿秤(サオバカリ)の鉤にかけて重さをはかることから〕秤で重さが量られる。「重すぎてこの秤には~・らない」
(5)もたれる。 よりかかる。「手すりに~・って休む」「もたれ~・る」「しなだれ~・る」「かきおこされて人に~・りてものす/蜻蛉(上)」
(6)仕組んだものに捕らえられる。「大きな魚が網に~・る」「わなに~・る」「計略に~・る」
(7)(「心にかかる」などの形で)心配になる。「子供のことが気に~・る」「心に~・る」
(8)戸などが開かないように, 掛け金や鍵で固定されている。「ドアに鍵が~・っている」
❷物が上方に置かれる。 《懸・掛》(1)ある物がほかの物を覆うように置かれる。「雲が月に~・る」「霞が~・る」「カバーが~・った本」「ワックスが~・った床」
(2)液体や粉末が上方から注がれる。「水が~・る」「波しぶきが~・る」「雨が~・る」「ほこりが~・る」「ドレッシングの~・ったサラダ」
❸身に作用を受ける。 《懸・掛》(1)好ましくない作用を受ける。「あなたに迷惑が~・っては申し訳ない」
(2)疑いが向けられる。「 K 氏に嫌疑が~・る」
(3)期待が向けられる。「ひとり息子に期待が~・っている」
(4)(ア)他から言葉による働きかけを受ける。「『よう御両人』と声が~・る」「誘いが~・る」(イ)命令・指示が与えられる。 「号令が~・る」「医者からストップが~・る」
(5)魔法・麻酔など特別な作用が及び, 普通でない状態になる。「麻酔が~・っているので痛みを感じない」「暗示に~・りやすい人」
(6)(力が)加わる。「パイプに強い圧力が~・る」「右足に体重が~・る」「この電極には一〇〇ボルトの電圧が~・っている」
(7)道具を用いて表面に加工が施される。「木材にはきれいにかんなが~・っている」「アイロンの~・ったワイシャツ」「みがきの~・った丸太」
(8)課せられる。「給料には所得税が~・る」
❹ある物がほかの物に渡される。 また, 作用が一方から他方へ向かう。(1)(ア)一方から他方へさし渡される。 《懸・架》「谷につり橋が~・っている」「空に虹が~・る」(イ)糸・ひもなどの両端が結ばれて渡される。「鉄塔と鉄塔の間に高圧線が~・る」「クモの巣が~・る」
(2)電話で, ほかへの通話が行われる。 《掛》「電話が~・ってくる」(3)上に置かれる。 手などがふれる。 《掛・懸》「肩に手が~・る」「引き金に指が~・る」❺取り扱われる。 扱いを受ける。(1)論議・審議の対象として取り上げられ, 処理される。「例の件は今日の会議に~・る」「裁判に~・る」
(2)面倒をみてもらう。「子に~・ると云ふ日本特有の風習/半日(鴎外)」
(3)診察を受ける。 治療を受ける。「医者に~・る」
(4)人に見られるようになる。「また来週お目に~・りましょう」「人目に~・る」
(5)傷つけられたり殺されたりいじめられたりする。「敵の手に~・る」「刃(ヤイバ)に~・る」「ひとの口に~・る(=ウワササレル)」「兵火に~・って焼失した」
(6)ある人の扱いを受ける。「孫に~・っては会長もただの甘いおじいさんだ」「彼の手に~・るとオンボロ車もピカピカになる」
❻機械・装置が起動された状態になる。 機械が動く。「エンジンが~・る」「ラジオが~・る」「レコードが~・っている」「バッハの曲が~・っている」
❼(「繋る」とも書く)ひもなどでつなぎとめられる。(1)ひもで縛られる。「縄が~・った俵」「水引の~・った品」「お縄に~・る」
(2)船が係留される。 停泊する。「沖に船が~・っている」
❽建物が作られる。(1)ある場所に仮設の建物が作られる。 仮設される。「広場にサーカス小屋が~・る」
(2)芝居や興行などが行われる。「忠臣蔵が~・っている劇場」
❾あるものに託す。(1)あることの賞として金品の渡されることが示される。 《懸》「優勝者には一〇〇万円が~・っている」「懸賞が~・る」(2)それによって物事が決まる。 《懸》「甲子園の出場が~・った試合」(3)ある契約がなされている。 《掛》「この家には火災保険が~・っている」❿その領域に至る。(1)その場所に至る。「登りに~・る」「松林を過ぎると山道に~・る」
(2)その時期・時間に至る。「夜中まで~・ってやっと終わった」「追い込みに~・る」「冬に~・る」
(3)他の方へ及ぶ。「鼻に~・った声」
⓫関係がある。(1)重大な関係がある。 …に関する。 《係》「傷害事件に~・る一件書類」「会社の運命に~・る秘密」(2)携わる。 かかずらう。 《係》「公害防止に~・る行政組織が不十分だ」(3)ある語句が, 他の語句と文法関係や意味関係をもつ。 《係・懸・掛》⇔ うける「主語が述語に~・る」「下の句に掛け詞として~・っている」⓬費用・労力・時間などを要する。 費やされる。 入用になる。「これを作るには金も時間も~・る」「修理するには一〇万円以上~・る」「手間が~・る」「暇が~・る」
⓭ある物に別の種類の物が混ざる。「赤みの~・った茶色」
⓮相手にして向かっていく。「やる気か。 さあどこからでも~・ってこい」「…に食って~・る」「襲い~・る」
⓯交尾する。「近所の雄犬が~・る」
⓰着手・従事する。(1)その作業をする。 取り組む。 《掛》「三人で~・ってやっと運べるほどの庭石」(2)(動作性の名詞や動詞の連用形に助詞「に」の付いたものを受けて)その作業を始める。 手をつける。 着手する。 《掛》「今日から印刷に~・る」「反対派を押さえに~・る」「ビラをはがしに~・る」⓱(動詞の連用形に付く)(1)もう少しでそうするところである。 …しそうになる。「川でおぼれ~・った」「暮れ~・る」
⓱(動詞の連用形に助詞「て」の付いたものに付いて)…した態度で臨む。「子どもだと思ってばかにして~・る」「相手をなめて~・る」
⓱(1)すがりつく。 まつわる。「御指貫の裾に~・りてしたひ聞え給ふほどに/源氏(薄雲)」
(2)矢が的に当たる。「二つの矢どもの~・りてなむ/蜻蛉(中)」
(3)出会う。 ぶつかる。「いかなる行きぶれに~・らせ給ふぞや/源氏(夕顔)」
(4)巻き添えになる。 連座する。「この兄殿の御ののしりに~・りて/大鏡(道隆)」
〔「かける」に対する自動詞〕‖可能‖ かかれる︱慣用︱ 息が~・お座敷が~・嵩(カサ)に~・肩に~・口が~・声が~・手が~・手に~/箸(ハシ)にも棒にもかからないIIかかる【斯かる】〔「かくある」の転〕(1)こんな。 このような。「~事態になろうとは」
(2)はなはだしい。 ひどい。III「これは~迷惑でござりまする/狂言記・長光」
かかる【皸る】あかぎれになる。 ひびが切れる。IV「稲搗(ツ)けば~・る我(ア)が手を/万葉 3459」
かかる【罹る】〔「掛かる」と同源〕ある病気になる。「重い病気に~・る」「マラリアに~・る」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.